こんにちは。
現代っ子税理士のわのりです。
先日、担当しているクライアントの月次レビューをしていると「預かり金」に不穏な残高が・・・。
そう、先月計上した預り源泉税が落とされていない(減少していない)。
「あ〜納付忘れちゃってるかな〜」と思いつつ確認してみると案の定納付漏れでした。
人的ミスは絶対になくなるものでは無いので起きてしまった事を悔いてもしょうがない。
すぐに納付の準備と滞納に係る罰則金額を案内しようと思い罰則金の計算をしましたが、久しぶりに計算してみると「あれっ?端数処理これで合ってたっけ」と一部不安に。
今回は源泉所得税の概要から、納付が漏れてしまった場合の対応・罰則金及びその計算方法についてまとめました。
源泉所得税とは
そもそも源泉所得税とは、所得税の源泉徴収制度に基づき、本来納税義務がある所得受給者に代わり所得税を預かって納付をする税額のことを言います。
主に、従業員への給与支払いや、税理士や弁護士などに支払う報酬に対して発生します。
源泉所得税の納期
源泉所得税の納期は原則、源泉徴収すべき報酬を実際に支払った月の翌月10日です。
翌月10日が休日の場合はその翌日となります。
そのため未払計上している報酬に係る源泉所得税は、実際に支払いを行い未払勘定を落とす月の翌月10日まで納付する必要はありません。(未払の時点では所得受給者の所得が確定しておらず所得税自体が発生していないので当たり前ですね。)
また、従業員が常に10人未満の場合には納期を年2回(7月10日と1月20日)の固定時期にできる特例があります。
適用にあたっては届出書の提出が必要となりますが、納期が固定されることにより事務手数の削減・納付漏れ対策にもなるので適用条件を満たす場合は積極的に適用されることをおすすめします。
こちらについては後日別記事でまとめたいと思います。
納付漏れがあった場合どうすれば良い?
納付漏れがあった場合は焦らずに、その滞納金額と本来の納期及び納期からの経過期間を把握し、それもとに罰則金を計算して速やかに納付を行いましょう。
実務的には、滞納額が少額であれば、後ほど解説する罰則金が端数処理の関係で免除される可能性があるので、次に発生する納期に納付した場合に生じる罰則金を計算し、罰則金0円であるなら、事務手数を考えて次回の納期に通常の納付と合わせて納付してしまうことが多いです。
滞納にかかる罰則金
源泉所得税の滞納にかかる罰則金は主に3つあります(悪意がなければ2つ)。
延滞税
本来の納期限の翌月から滞納額の完納までの日数に応じて「延滞税」が生じます。
完納まで期間が空くほど税額が増えていくので、滞納が発覚した場合は速やかに納付しましょう
計算方法
延滞税の計算方法は少し分かりづらく、「①本来の納期の翌日から2月を経過するまでの期間」と「②それ以後の期間(本来の納期の翌日から2月を経過する日の翌日以後の期間)」で税率が異なります。
そのため、①と②の税額をそれぞれ計算し合算した金額が延滞税の額となります。
国税庁HP「延滞税の計算方法」より
①の延滞税の割合は「7.3%」と「特例基準割合+1%」のいずれか低い割合
②の延滞税の割合は「14.6%」と「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合
となります。
平成30年時点の割合としては①が「2.7%」、②が「9%」です。
端数処理
上記の画像にも記載がありますが、延滞税の計算上いくつかの時点で端数処理が行われます。
その結果、以下の場合には延滞税額が0円となるため納付義務が免除されます。
・滞納している源泉所得税額が10,000円未満の場合
・計算された延滞税額が100円未満の場合
不納付加算税
延滞税の他に必ず発生する罰則金が「不納付加算税」です。
こちらは延滞税とは異なり、完納までの期間に関わらず滞納額に準じた一定額が課されます。
計算方法
不納付加算税の計算方法は「税務署から指摘されて納付した場合」と「税務署からの指摘前に自主的に納付した場合」で税率が異なります。
◆税務署から指摘されて納付した場合
滞納額(10,000円未満切捨) × 10% = 不納付加算税額(100円未満切捨)
◆自主的に納付した場合
滞納額(10,000円未満切捨) × 5% = 不納付加算税額(100円未満切捨)
自主的に納付した方が税率が半分になるため、税務署から指摘を受ける前に速やかに納付しましょう。
端数処理
上述の通り、延滞税と同様に税額の計算途中に端数処理が行われます。
また、国税通則法119条4項より税額が5,000円未満の場合にはその全額が切り捨てられる事となります。その結果、以下の場合には不納付加算税額が0円となるため納付義務が免除されます。
・滞納している源泉所得税額が10,000円未満の場合
・計算された不納付加算税額が5,000円未満の場合
重加算税
最後に、源泉所得税の滞納が故意に隠蔽されたものであり、税務署から悪質性が高いと判断された場合には「重加算税」が課されます。
(この記事を読んでいる方は重加算税が課される滞納をされているような方ではないと思いますが・・・。)
計算方法
不納付加算税とほぼ同様の計算式となります。
滞納額(10,000円未満切捨) × 35% = 重加算税額(100円未満切捨)
端数処理
こちらも不納付加算税と同様に税額が5,000円未満であればその全額が切り捨てられますが、そもそも重加算税の対象であると税務署より指摘を受けている時点で税額が5,000円未満になることは無いのではないかと思います。
不納付加算税の減免制度
いつも真面目に納付をされている方については、不納付加算税が1回だけ免除される場合があります。
免除の対象となるには以下の要件を満たしていることが必要です。
- 納付漏れしてしまった源泉所得税を、本来の納期限の翌日から1月以内に完納していること。
- 本来の納期限の前月末日から1年前までの期間において、源泉所得税の納付漏れが生じていないこと。
要するに、いつもは真面目に納付していたけれど今回たまたま納付を忘れてしまった方については、
救済措置として一回だけ不納付加算税を免除してくれる訳です。
ただ、一回この制度を適用すると、次にこの制度を使うことができるのは約2年後となりますのでご注意下さい(適用要件の②を満たせなくなるため)。
納付漏れ対策
ここまで、源泉所得税の納付漏れが生じた場合の対応方法・罰則金の種類及びその計算方法を説明しましたが、当然ながら理想は納付漏れが生じないことです。
そのため、下記の方法により納付漏れ対策を行うことをお勧めします。
- 会計システムにおいて勘定科目や補助科目単位で他の預り金と区別し、残高を個別管理する。
- 月次決算において前月計上した預り源泉所得税が綺麗に流れているか必ず確認する(備忘のため月次作業のチェックリストを作成するとなお良い)。
- 年度の初めに後ろ一年間の納付期限(毎月10日)を確認し、スケジュールに組み込んでおく (スマホの通気機能があるカレンダー等に登録すると良い)。
- 適用可能であれば源泉所得税の納期の特例を利用する。
まとめ
今回は源泉所得税の納付漏れについて解説しました。
納付漏れは起きないことが一番ですが、起きてしまったら焦らず速やかに納付手続きを行いましょう。
間違っても税務署から指摘されるまで何もせず放置などはしないように!!
当該記事は執筆時点の法規に基づき書かれたものです。改正等により内容が変更になっている場合がありますので、その旨ご留意ください。
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若手税理士(30は若手なのか・・・?)のわのりが運営する雑記ブログ。
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