こんにちは。現代っ子税理士のわのりです。
前回は借地権の税務論点について、そもそも借地権とはどの様なものなのかと言う所から、借地権の認定課税の概要を説明しました。
前回の結論としては、借地権の設定をしていなかったとしても税務上は借地権の取引があったとみなして、税金が課されるというものでした。
しかしながら、実は借地権の設定をしていなくても認定課税がされない場合(回避方法)があります。
今回は、借地権の認定課税がされない様にするにはどうすれば良いのか解説したいと思います。
借地権の認定課税を回避する方法は3パターン
借地権の認定課税を回避する方法は大きく分けて3パターンの方法があります。
さっそく見ていきましょう。
借地権を設定する(パターン1)
一つ目の回避方法は当たり前ですが「借地権を設定」するです。
借地権の認定課税は、「借地権の設定がされていない」ことを前提に適用されるため、そもそも借地権を設定していれば認定課税の適用はありません。
支払地代を「相当の地代」の額に設定する(パターン2)
二つ目の回避方法は、土地の賃借契約に基づき支払う賃借料(以下「地代」と表記します。)を「相当の地代」の額に設定する方法です。
土地を賃借する場合、借地権を設定しているか否かに関わらず、地代を契約に基づき毎月又は毎年などのスパンで支払うことになります。
この時に支払う地代は、契約時に近隣の地代相場をたたき台として契約者間で決めることになります。
通説ではだいたいその土地の固定資産税・都市計画税の2〜3倍程度になるかと思いますが、近隣の地代相場により合理的な地代が算定出来ない場合は以下の算式で計算した金額を地代とすることが多いでしょう。
土地の時価×(1ー借地権割合)×6%
この様にして決められる地代を「通常の地代」と呼びます。
パターン2は支払う地代をこの「通常の地代」の額に代わり、「相当の地代」の額にすることにより、借地権の認定課税を回避できる方法となります。
この「相当の地代」は以下の算式により算定されます。
土地の時価×6%
算式を見て分かる様に、相当の地代は通常の地代より金額が大きくなります。
これは、「本来設定するべき借地権の額を地代に上乗せして支払う」という考えに基づいたものであり、地代の中に借地権部分の取引も含まれているとみなされ、借地権を設定していなくても認定課税を回避することができます。
無償返還方式による賃借契約を結ぶ(パターン3)
三つ目の回避方法は「無償返還方式」という契約方式により土地の賃貸借契約を結ぶ方法です。
「無償返還方式」とは「土地の契約期間終了後、土地を無償で返還します」という契約です。
この方法で認定課税を回避する場合、以下の対応を行う必要があります。
- 契約書に無償返還を行う旨を記載する
- 税務署に「土地の無償返還に関する届出書」を提出する
要は、契約書上でしっかりと無償返還をする事を誓約し、それを税務署へ届出書をもって通知するという事です。
この方法の場合、支払う地代は前述の「通常の地代」の額でよいため、3パターンの中で一番キャッシュアウトを抑えることができます。
ただし、この方法は地主(賃貸人)又は賃借人のどちらかが「法人」である場合のみ適用が出来ることに注意が必要です。
その他、届出書の提出漏れ等があった場合は通常通り認定課税がされます。
実際どの回避方法が良いのか
では、実際どの回避方法が一番良いのかと言いますと、これはケースバイケースであり、かつ相続税の論点等も絡んでくるため、一概にこの方法が一番良いとは言えません。
ただ、あくまでキャッシュアウト等のみを勘案するならば、パターン3の「無償返還方式」による回避方法となります。
最終的にどの方法を適用するかは、顧問税理士にご相談のうえご判断頂くのがよろしいかと思います。
まとめ
前回の記事含め全2回で「借地権」に関する税務論点の概要をまとめてみました。
税法には今回の借地権の認定課税の様に、知らないと後で多額税金が課される落とし穴がいくつもあります。
今回の借地権の記事が、「もしかして私の結んでる賃借契約って・・・。」という気づきの一要因になれれば幸いです。
※本記事に関する個別ケースのご相談・ご質問は受け付けておりません。最寄りの税理士の方へのご相談をお願いいたします。
当該記事は執筆時点の法規に基づき書かれたものです。改正等により内容が変更になっている場合がありますので、その旨ご留意ください。
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若手税理士(30は若手なのか・・・?)のわのりが運営する雑記ブログ。
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